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| 「ベニスに死す」 |
監督:ルキノ・ヴィスコンティ伯爵
これもドイツ三部作の一つ、そしてあまりにも有名な耽美派美少年映画である。
原作はドイツのノーベル賞作家トーマス・マンの難解な心理小説。
それをこの映像作家は、極度に科白を控えたストイックな作劇で、「美」そのものといっていい傑作に仕上げている。
舞台は前世紀の初頭、丁度百年ほど前のヴェネツィアである。
そこに、ドイツの初老の作曲家グスタフ・フォン・アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)が静養のためにやってくる。
アッシェンバッハは原作では作家だが、トーマス・マンがマーラーをモデルに創造した人物であるといわれているので、ヴィスコンティはこれを作曲家と設定し直したのだ。
アッシェンバッハは自らの功績で男爵に叙された新興貴族、功成り名を遂げた芸術家だが、俗臭のない純粋な人物であるゆえ、創作に行き詰まり神経衰弱を病み、転地療養に来たのである。
当時のヴェネツィアはハプスブルク皇室の所領である。
即ち、まだサヴォイ王室による統一イタリア王国には編入されていない。
従ってハプスブルク朝オーストリア・ハンガリー帝国の各地から、様々な民族の「帝国臣民」が自国の保養地として、観光にやってくる状況にあった。
ウィーンから来たと思われるアッシェンバッハに続き、同じくハプスブルク帝国内であったポーランドのクラクフから、ポーランド貴族の一行が到着する。
その中に、美少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)がいた。
映画はこの美少年に魅せられ、内部から「壊れていく」老作曲家をひたすら静かに追っていき、そのままクライマックスにいたる。
テーマ曲として用いられているグスタフ・マーラーの交響曲第五番の第四楽章「アダージェット」が疫病(コレラ)の流行により観光客が次々に逃げ出すヴェネツィアの街、そしてそこを彷徨うアッシェンバッハに絶妙にかぶさり、死の香り濃厚なデカダンスの極致とも言える映像美を生み出している。
何度観ても飽きることのない、大好きな一本である。 |
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