特集:映像 × 民俗(ヴィジュアル・フォークロア)
【第1期 北村皆雄作品特選】
日本とアジアを現場(フィールド)に 民俗の諸相を記録し続けて来た
映像制作者集団 ヴィジュアルフォークロア
この世界の、謎めいた豊かさを目撃する秘蔵の民俗ドキュメンタリーを月替わりで上映
【ヴィジュアルフォークロア】
1981年創立。日本とアジアを中心に民俗文化の世界の映像化を行なっている。代表の北村皆雄は、目に映ずるものと耳に聞こえる音や言葉を記録することによって、その土地に生きる人たちの内的なものを浮かび上がらせる映像民俗学の世界を追ってきた。
定期上映の開催にあたって
映画監督・ヴィジュアルフォークロア代表 北村皆雄

24歳の時に、沖縄久高島と出会ってから50年間、映像によって民俗の世界を追ってきた。日本とアジア地域の神事、秘祭、芸能、宗教、民俗、歴史の記録をして、すでに消えてしまったものも多い。
今回、ヴィジュアルフォークロアの仲間たちと共に民俗の古層に潜りカメラを向け続けてきた作品が、観客の心に少しでも届いてくれたら、それ以上の喜びはない。
【第1期 北村皆雄作品特選】
見世物小屋 〜旅の芸人・人間ポンプ一座〜(1997年)
カベールの馬 〜1966年イザイホー〜(1966年)
女が男を守る島 〜神の島 久高〜(1984年)
冥界婚(2016年)
チベット死者の書(1994年)
バナーラス〜生と死の巡礼都市〜(1995年)
修驗 〜羽黒山秋の峰〜(2005年)
花祭り〜愛知県設楽郡東栄町 月〜(1992年)
【料金・チケット】
一般:1,500円
専門・大学生:1,200円
シニア:1,100円
中学・高校生:1,000円
小学生以下:700円
会員料金:1,000円
会員料金について
上映館…第七藝術劇場(6階)・シアターセブン(5階)
それぞれ各館の会員のみ割引となります。
(ナナゲイ会員はナナゲイでのみ1,000円、セブン会員はセブンでのみ1,000円)
★お得な3回券
「映像×民俗」3回券:3,600円
(「映像×民俗」上映期間中に使用できます。上映期間中に窓口にて販売いたします)
※複数名でのご利用不可。ご本人様のみご利用いただけます。

第1講 失われ行く者たち
2018年 11月10日(土)〜16日(金)
見世物小屋〜旅の芸人・人間ポンプ一座〜
(1997年/119分/カラー/4:3)
かつて各地の祭りの場に忽然と現われ、おどろおどろしい絵看板と巧みなコマシで、不思議で怪しい、恐ろしくも珍しい、面白く物悲しい別世界へと引きずり込んだ見世物小屋。飲んだ金魚を生きたまま釣って出す、飲んだ碁石を黒白分けて出すなど、想像を絶する芸で観客の視線をわしづかみにした「人間ポンプ」こと安田里美さんと、一座9人の見世物小屋興行を内側から記録。それぞれに事情を抱えた芸人たちの芸と人生、その光と闇の世界を捉えた。医者も法律も宗教も救えない人たちを「見世物小屋」が救っている。

【監督】北村皆雄
【撮影】明石太郎・高橋愼二
【語り】麿赤兒
【制作】三浦庸子
カベールの馬〜1966年イザイホー〜
(1966年/28分/モノクロ/4:3)
イザイホーは、琉球王朝の聖地・久高島で十二年に一度午年に行われる神事。
島で生まれ育った30歳から41歳までの女性が、島の祭祀集団に参加する神女としての資格を得るために行う。新しいセジ(霊力)を受け、男兄弟を守護するオナリ(姉妹)神、家・村の繁栄と安全を願う神女として新たに生まれ変わる成巫式である。1966年のイザイホーを題材に、島の始祖神話、オナリ神信仰、御嶽、風葬など神の島の精神文化を、北林谷栄演じる老女が語る幻想紀行。1978年を最後に途絶えたイザイホーの貴重な記録。風葬の撮影が物議をかもした北村皆雄の最初期作品である。

【監督】北村皆雄
【撮影】市川雅啓
【語り】北林谷栄
女が男を守る島〜神の島 久高〜
(1984年/48分/カラー/4:3)
イザイホーは、琉球王朝の聖地・久高島で十二年に一度午年に行われる神事。
島で生まれ育1978年を最後に途絶えた沖縄久高島の成巫儀礼イザイホー。年間30を越す神の島の祭祀を担う神女が新たに誕生しなくなったことから、島の年中行事も遠からず消滅するだろうと予測。1982年から84年にかけて記録に乗り出し、撮影した映像は70時間におよぶ。その一部をテレビ放送用にまとめた作品。年中行事を通して、女が男を守るという「オナリ(姉妹)神信仰」の姿が浮かび上がる。劇場初公開作品。

【監督】北村皆雄
【撮影】柳瀬裕史
【制作】三浦庸子
上映スケジュール
第1講 失われ行く者たち
11/10(土)〜16(金) 10:00〜 見世物小屋 第七藝術劇場(6階)
13:00〜 『カベールの馬』+
『女が男を守る島』
シアターセブン(5階)
【レクチャー 】
★11/10(土)『見世物小屋』10:00の回上映後
 北村皆雄監督 × 鵜飼正樹さん(大衆文化研究/京都文教大学教授)

第2講 生きている死者 死後の願い
2018年 12月8日(土)〜14日(金)
冥界婚
(2016年/1999年撮影/104分/カラー/4:3)
1999年、34歳の韓国人が遠洋漁業で行方不明になった。誤って海に落ちたのか、それとも事件なのか?残された親・兄妹は、ムーダンと呼ばれるシャーマンのグループに依頼し、儀礼を行う。失恋自殺をした27歳の女性の霊魂との死後結婚を執り行い、あの世での幸福を願う。シャーマンの口寄せで来臨した、死者と生者の感情が交錯し、哭きと恨のめくるめく世界が現出する。海辺の仮設テントでムーダンの磨き上げた芸能と共に展開する笑いと涙の物語。韓国東海岸で活躍したムーダン、人間文化財・金石出(キム・ソクチュル)グループの貴重な記録である。2014年セウォル号沈没の悲劇を契機に完成させた。

【監督】北村皆雄
【撮影】毛利立夫
【翻訳】李惠燕
【出演】金石出とそのグループ
【制作】三浦庸子
チベット死者の書
(1964年/37分/カラー/4:3)
生きている者にとって死とは何か? 苦悩に満ちた輪廻転生を、悟りの道程へと転化させるチベットの死の経典「死者の書」は、今も死に臨んだ人の枕辺で唱えられている。チベット仏教が蓄積してきた死への深い洞察〈タナトロジー〉が生者に語りかけてくるものは何か? 読むだけでは難解な「死者の書」の曼茶羅世界を、わかり易く映像化。鳥葬や死の儀式なども収録。これは、チベット密教の世界が近くなる〈観る経典〉である。劇場初公開作品。

【監督】北村皆雄
【監修・構成】田中公明 
【【語り】米倉斉加年
【曼荼羅撮影】高橋愼二
【読経】ニチャン・リンポチェ
バナーラス〜生と死の巡礼都市〜
(1995年/36分/カラー/16:9)
三千年前、悠久の流れガンジス川のほとりに開けたインド最大の宗教都市バナーラス。ここには、誕生の喜びから死の悲しみまで人間のあらゆる喜怒哀楽を受容し、人々に夢と希望を与え、死と苦しみから救ってくれる再生装置、癒しの仕組みが至る所にある。数ある沐浴場の一つアッスィー・ガートを中心に、生老病死のあらゆる節目で繰り広げられる祈りと暮らしを記録。死期を悟った者が最期の時を過ごす〈解脱の館〉や、超俗的な生活を送る修行者たち、巡礼者とそれを相手にする商売人など、様々な人間模様が展開する。劇場初公開作品。

【監督】北村皆雄
【撮影】長谷川元吉・八幡洋一
【監修】宮本久義
【ナレーター】名古屋章
上映スケジュール
第2講 生きている死者 死後の願い
12/8(土)〜14(金) 10:00〜 冥界婚 第七藝術劇場(6階)
13:00〜 『チベット死者の書』+
『バナーラス』
シアターセブン(5階)
【レクチャー】
★12/8(土)『冥界婚』10:00の回上映後
 北村皆雄監督 × 崔吉城さん(韓国文化研究/東亜大学教授/広島大学名誉教授)

第3講 山の精神(スピリット)
2019年 1月19日(土)〜25日(金)
修驗〜羽黒山秋の峰〜
(2005年/115分/カラー/16:9)
人は、死んで山に入り、山を胎内として再生する。このような古代的感覚を色濃く残す羽黒修験は、中世から密教的色彩に彩られ複雑に儀礼を発達させた。その羽黒修験のなかでも、部外者の立入を禁じ、門外不出とされる9日間の秘密の修行「羽黒修験・秋の峰」を史上初めて撮影。出羽三山(羽黒山、月山、湯殿山)を舞台に、生きながら〈死と再生〉〈生まれ清まり〉を体験する修験者の修行が、精緻な世界観と哲学に裏打ちされていることに驚きを禁じ得ない。秘密の儀礼を通して、日本人が山に対して抱いてきた精神世界が垣間見える。全容を後世にむけて記録保存するという目的のために、特別に撮影が実現した。

【監督】北村皆雄
【撮影】高橋愼二・村口徳行・ 毛利立夫・東野良
【語り】浜畑賢吉
【協力】羽黒山荒澤寺正善院
花祭り〜愛知県設楽郡東栄町 月〜
(1992年/76分/カラー/4:3)
中世末期、天竜川水系に成立した大神楽を祖型とする花祭りは、毎年11月から正月にかけて北設楽郡の十数の地区で行われている。天竜川の交通に伴ってこの地を訪れた修験者や御師によって形成・発展したものと思われ、諏訪・伊勢・熊野信仰の影響がうかがわれる。花太夫が聖なる湯によって神仏をもてなす「湯立て」の神事は宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』のモチーフになったといわれる。イニシエーションの意味を持つ青少年の舞、荒々しい鬼たち、翁など、祭りの場には様々なカミが入れ替わり立ち替わり現れる。山の民の祈りの深層にダイブする記録である。山本ひろ子と神語り研究会の調査・研究をもとに映像化。劇場初公開作品。

【監督】北村皆雄
【撮影】明石太郎・村口徳行
【構成・監修】山本ひろ子と神語り研究会
【語り】伊藤惣一
上映スケジュール
第3講 山の精神(スピリット)
1/19(土)〜25(金) 10:00〜 修驗 第七藝術劇場(6階)
13:00〜 花祭り シアターセブン(5階)
【レクチャー】
★1/19(土)『修驗』10:00の回上映後
 北村皆雄監督 × スワンソン・ポールさん(仏教学・宗教学研究/南山大学教授)

【公開予定作品】秘蔵作品を続々公開!
『ほかいびと〜伊那の井月〜』(2011 年/119 分)
芥川龍之介、山頭火、金子兜太らから高く評価された幕末維新を生きた放浪の俳人・井上井月( いのうえ・せいげつ)。30 年間、信州伊那谷で放浪し、一宿一飯のお礼に俳句を残し、野垂れ死に同然に死ぬ。謎めいた生涯を、舞踊家・田中泯が追体験する。語りを樹木希林がつとめる。

『海南小記序説・アカマタの歌〜西表・古見』(1973 年/84分)
撮影禁止の南島のまれびと来訪の祭祀〈アカマタ・クロマタ〉に臨んだ映画クルーが、島民に「撮ったら殺す」と脅されながら撮影したものとは?アカタマの村17軒の家族の聞き書きの記録。長年封印されてきた作品を特別上映。

『精霊の山 ハヤマ』(2006 年/100 分)
思想家・中沢新一脚本による意欲作。死者がたたずむ東北各地の低山〈ハヤマ〉の信仰を足がかりに、生ける死者とともに暮らす日本人の心の在り方を描く。地元の研究者千歳栄の思いからこの映画が生まれた。

『デヴォキ〜ヒマラヤ・神に捧げられた女たち』(1992年/47 分)
寺院に捧げられ神と結婚した女性たちは〈デヴォキ〉と呼ばれ、俗世での結婚は許されない。いにしえの寺院娼婦を伝える彼女たちの姿を通して、ネパール社会のタブーに切り込む問題作。

『南島残照 女たちの針突〈ハジチ〉〜沖縄・宮古諸島のイレズミ〜』(2014年/64 分)
沖縄・宮古のおばあたちの手に刻まれたイレズミ〈ハジチ〉。激動の世を生きた女たちの人生が、深く刻まれたシワとともに、饒舌な島言葉で語られる。南島のイレズミ文化の消滅直前に約20名に取材した貴重な記録。