●2007 年、監督の亀井岳はモンゴルの旅において、ホーミーの名人の息子であるザヤーと出会った。口数の少ない彼は言った。
「ホーミーは遊牧民のものだよ」。
豊富な地下資源のために外貨があふれだし、近代化へと急速な変化を遂げている現在のモンゴル。首都ウランバートルには現金収入を得るため、遊牧民たちが遊牧をやめて移住するようになっていた。それは、自然の中で育まれてきた遊牧民による本来の「ホーミー(喉歌)」が、失われつつあることを意味している。一方で、観光客相手にお金が稼げるホーミーを習う人が増えているという現状。
ザヤーの言葉は、この現状に戸惑っているかのようだった。なぜなら、彼自身もウランバートルにいる遊牧民の一人なのだ。
映画『チャンドマニ 〜モンゴルホーミーの源流へ〜』は、ホーミーの故郷「チャンドマニ村」を目指す二人の青年が、モンゴル人である自分自身と向きあう旅を描いたドキュメンタリードラマ。馬頭琴、長唄などの伝統音楽にのせて、現在のモンゴルに生きる人々を静かに映し出した作品である。風の中に溶けこんでいくようなホーミー、少数民族による昔ながらの芸能など、心に響く音の数々が散りばめられている。
本作が長編劇映画初監督作品となる映像作家・亀井岳は、モンゴルの旅をきっかけに、「遊牧民の生活と美しい自然の中で育まれてきた本来のホーミーを、今、映像に刻み付けておかなければならない」という強い思いから映画制作を決意。2008 年、古木洋平と共に厳しい冬のモンゴルで撮影をおこなった。
撮影が旅なのか、旅が撮影なのか、ひとつずつの出会いがこの作品を完成させていく。
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