生きるために、少女は夢を見た
メキシコ、グアテマラの南に位置する中米の国ニカラグア。独裁政権や内戦が長らく続いた影響で経済は停滞し、いまなお貧困が大きな課題となっている。国内で製作された長編映画はこれまでわずか数本で、『マリア 怒りの娘』はニカラグア出身の女性監督による初めての長編映画である。
ローラ・バウマイスター監督は、1983年ニカラグアに生まれ、メキシコの国立映画学校で学んだ。2014年に制作した短編『Isabel Im Winter』が、2014年カンヌ国際映画祭批評家週間で上映された実績を持つ。初の長編となる本作では、ニカラグアの首都マナグアに存在する国家最大級のゴミ捨て場ラ・チュレカを舞台に、母の不在に直面する少女マリアの姿を、内なる世界を幻想的に交えながら描き出す。
アルフォンソ・キュアロンやクリストファー・ノーランなどこれまでも数多くの偉大な監督を発掘してきたトロント国際映画祭ディスカバリー部門に選出され、2022年秋にワールドプレミア上映されて高く評価された。
主人公マリアを演じたのは、演技未経験だったアラ・アレハンドラ・メダル。パンデミックによる撮影延期により元々予定していた俳優がマリア役に合わなくなり、エキストラのオーディションに参加していたアラに白羽の矢が立った。主人公と似た境遇で生まれ育ったというアラが、母を思い、言葉にならない怒りを募らせるマリアを圧倒的な存在感で演じている。
11歳のマリア(アラ・アレハンドラ・メダル)は、ニカラグアのマナグア湖に隣接する広大なゴミ集積場の近くで、母親のリリベス(バージニア・セビリア)と共にゴミ収集をしながら暮らしている。ある日、政府はゴミ収集事業の民営化を決定し、これに対してゴミ収集で生計を立てていた人々が反発。大きな抗議活動へと発展し、政府と住民との衝突が続いていた。
抗議活動の影響で廃棄物が売れなくなり、生活がさらに苦しくなったリリベスは、街の組織と取引をし、マリアがかわいがっていた子犬たちを売って生計の足しにしようとしていたが、不意の出来事によりその取引ができなくなってしまう。トラブルを解決するため、リリベスは知人夫婦(ノエ・エルナンデス、ダイアナ・セダノ)が営むリサイクル施設にマリアを預け、ひとり街へと出かけていく。その施設では行き場のない子どもたちが多く暮らし、廃棄物のリサイクル作業を手伝っていた。
「すぐに戻る」という母の言葉を信じて待つマリアだったが、母は何日経っても戻らない。マリアは戸惑い、混乱し、言葉にならない怒りを募らせていく。周囲に馴染もうとせず孤立するが、マリアを心配し気にかけてくれる少年タデオ(カルロス・グティエレス)に少しずつ心を許し仲良くなる。しかし、母への思いは日増しに募り、タデオの助けを得て施設から抜け出し、母を捜す旅に出る――
2024/3/9(土)~22(金) |
- 上映終了しました -
一般 | 1,900円 |
シニア | 1,300円 |
専門・大学生 | 1,000円 |
中学生・高校生 | 1,000円 |
小学生以下 | 700円 |
会員 | 1,100円 |
★入場システム、サービスデー・その他割引 |